破損の危険性から本来塗装が推奨されないABS樹脂製パーツ。
このページではそれでも塗装をしたいというユーザーの為に、破損のリスクをできる限り抑えた塗装方法を紹介しています。

【!注意!】

  • これから紹介する方法で必ずパーツ破損を避けられるわけではありません。
  • コトブキヤではABSパーツの塗装は推奨しておりません。
    塗装を行う場合は自己の責任において行っていただくようお願いいたします。

ABSパーツが塗装が推奨されない理由 作業を始める前に 塗装手順 注意事項

 

ABSパーツの塗装が推奨されない理由

ABSパーツを塗装すると、塗料に含まれる溶剤(薄め液)がパーツの樹脂内に浸透し揮発すると、浸透部分が小さなヒビとなってパーツがもろくなります。
組み立て時や組み立て後、パーツ同士の接合部や関節部分などの浸透部分に負荷がかかると破損が起こります。これがABSパーツの塗装が推奨されない理由です。

 

作業を始める前に

組み立て時の注意点

パーツ同士の「合い」を調整する

パーツをはめ込むときの「かみ合わせ」がきつすぎるとパーツへの負荷が大きくなり、塗装後の組み立て時に破損の危険が高まります。そのためピンを削るなどしてパーツ同士の「合い」を事前に調整しておきます。

可動するパーツを分解しておく

可動するパーツは出来るだけ分解した状態で塗装を行い、最後に組み立てるようにしましょう。関節などの可動機構は勘合によって強度を確保・調節しており、負荷のかかった状態で塗装をすると破損の可能性が高まります。

 

塗料取り扱い時の注意点

1度に大量の塗料を乗せない

大量の塗料を乗せると乾燥まで時間がかかり、それだけパーツの表面に溶剤に触れる時間が長くなる為、溶剤が浸透しやすくなります。少しずつ表面に塗料を乗せていき、塗膜が乾燥してから塗り重ねるという方法で発色させていきます。

塗料を薄めすぎない

塗料はのびを良くするために溶剤(薄め液)で希釈して使用しますが、極端に薄めすぎると、パーツが溶剤(薄め液)に直接さらされることになるため、破損の危険性が高くなります。しかし濃すぎても上手く塗装が出来ない為、適度な濃度になるよう注意して希釈を行います。

 

塗装手順

STEP1)パーツの洗浄

中性洗剤を数滴入れた水に20~30分パーツを浸けておき、パーツに付着している油分を取り除きます。これは油分が塗料をはじいてしまうのを防ぎ、塗装後の仕上がりをきれいにするための作業です。洗浄後は流水でパーツをよく洗い流し、十分に乾燥させます。

 

STEP2)下地塗料吹きつけ

溶剤の浸透を防ぐため、まずは下地塗料(市販の模型用サーフェイサー等)を使用し保護膜を作ります。
スプレーをパーツから10cm程離し、素早く横へ移動させながら小刻みに吹き付けていきます。一度の吹きつけではまだらになり表面を覆えませんが、回数を重ねることで塗膜を作ります。一つのパーツに一度吹きつけたら、次のパーツへ移り、パーツ全体を一周したらもう一周という形で吹き重ねていくことで効率よく安全に塗料を乗せていくことができます。

 

 

このようにパーツ全体がムラなくグレーになっている状態が理想的です。
ここまで3~4回吹きつけを行いました。

 

下地塗料の吹きつけが完了した状態

 

 

STEP3)塗装開始

ここからは筆塗りの場合とエアブラシを使用する場合に分けて塗装の手順を紹介していきます。(今回は一般的なラッカー系塗料と、専用の薄め液を使用しています)。

筆塗りの場合

筆塗りで色を乗せていく場合、まず、色が乗りにくい部分(パーツの角、凹部分)から色を乗せていきます。筆は面相筆と呼ばれる毛先の細い筆を使用。塗料の濃度は薄めすぎてはいけませんが、濃すぎると筆運びが悪くなります。新品の塗料の濃度を目安に希釈します。

 

次に面を塗っていきます。ここでは平筆を使い、筆運びは一息に引っ張るイメージで。一度で発色させるのは難しいので、ここでも2~3回塗り重ねて仕上げます。塗り重ねる場合は、塗った面が完全に乾燥してから行うように注意しましょう。

 


【!悪い例!】
濃度の薄い塗料を一度で大量に塗りつけています。
破損の危険性が高くなるのに加え、十分に発色させるまで何度も塗り重ねる必要があり、完成までに時間がかかります。

 

エアブラシの場合

「モデルを手早くきれいに仕上げたい」という場合はエアブラシ塗装が向いています。エアブラシ塗装で注意する点は下地塗料の吹きつけ時と同様です。

  • 「1度に大量の塗料を乗せない」
  • 「塗料を薄めすぎない」

この2点。あせらず少しずつ色を重ねて発色させていきます。

 


【!悪い例!】
同種のパーツ左側は、濃度の薄い塗料を一度で大量に吹き付けています。
破損の危険性が高くなるのに加え、十分に発色させるまで何度も塗り重ねる必要があり、完成までに時間がかかります。

 

 

STEP4)スミ入れ

スミ入れはモデルの立体感を高めるためのポピュラーな技法で、パーツの凹面へ濃度を低くしたエナメル系塗料を流し込んで行います。
しかしエナメル溶剤は浸透性が高く、パーツに負荷がかかっている部分(パーツの接合部や関節部分)や基本色の全体塗装が完全に行き届いていない部分に流れ込むと高確率でパーツ破損につながります。そういった部分に流れ込まないように注意しつつ行ってください。

スミ入れ作業後のイメージ

 

注意事項

  • このページで紹介している方法で必ずパーツ破損を避けられるわけではありません。
  • 万が一上記手順で作業を行っている最中にプラモデルの破損が起こった場合でも、弊社では責任を負いかねますので十分にご注意ください。

 

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